これまでの高額療養費制度の仕組みでは、入院される方については、「認定証」等を提示することにより、窓口での支払いを自己負担限度額にとどめることが可能でしたが、外来診療では窓口負担が限度額を超えた場合でも、いったん当該負担額を負担し、後日、保険者に高額療養費の申請を行うことにより高額療養費の支給を受けるしかありませんでした。(一部の健康保険組合等においては例外もあると思います)
平成24年4月1日からは外来診療についても、同一医療機関での同一月の窓口負担が自己負担限度額を超える場合は、窓口での支払いを自己負担限度額までにとどめる取扱い(高額療養費の外来現物給付化)が導入されます。
下記の資料は、厚生労働省が発行しているリーフレットです。
(労務管理資料お問い合わせ番号12:厚生労働省)
高額な外来診療を受ける皆さまへ(概要)
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/gairai_sinryou/dl/120110-01.pdf
疑問点として出てきそうなものがいくつかQ&Aにまとめられています。その中でポイントとして特に押さえておきたいのは【質問4】・【質問9】・【質問11】・【質問12】・【質問15】でしょう。後日、保険者に高額療養費の申請をすることが必要となるケースが紹介されています。認定証等を提示することで高額療養費に関する申請は完了という訳ではないことは認識しておく必要があります。
【下記の資料よりピックアップ:質問4】
Q:月途中に限度額適用認定証又は限度額適用・標準負担額減額認定証が交付された場合、外来の高額療養費の現物給付化はどの時点から実施されることになるのか。
A:月途中に限度額適用認定証又は限度額適用・標準負担額減額認定証の交付を受け、医療機関に提示した場合、
(1) 認定証の提示の前に、その月の窓口負担の合計額が自己負担限度額を超えていない場合は、提示した以降に受診した窓口負担を含めて、その月のその医療機関での窓口負担の全ての合計額と自己負担限度額との差額が現物給付化の対象となります。【ケース1】
(2) 認定証の提示の前に、その月の窓口負担の合計額が自己負担限度額を超えている場合は、その月の窓口負担は現物給付化の対象とはせず、翌月以降、現物給付化が適用されます。このため、その月の高額療養費は、後日、保険者に申請してください。【ケース2-1】
(3) ただし、(2)の場合に、認定証の提示の前の窓口負担と自己負担限度額との差額を、患者からの相談に応じて、医療機関が払い戻しする場合もあります。この場合は、自己負担限度額に達する前に認定証を提示したものとみなして、(1)と同様の取扱いとします。【ケース2-2】
【ケース1】(認定証提示前に自己負担限度額に達していない場合)
(70歳未満・一般所得にあてはまる方)
4月1日
A医療機関で外来診療 総医療費100,000円、自己負担額30,000円
4月15日
限度額適用認定証が交付
4月16日
A医療機関で外来診療 総医療費300,000円
この場合、月の初めにさかのぼって適用されることになるため、自己負担限度額に達し、自己負担限度額が80,100円+(100,000円+30,000円-267,000円)×0.01=81,430円となります。したがって、4月16日の窓口での支払いは、81,430円-30,000円(4月1日支払い分)=51,430円でよいことになります。
【ケース2-1】(認定証提示前に自己負担限度額に達した場合)
(70歳未満・一般所得にあてはまる方)
4月1日
A医療機関で外来診療 総医療費300,000円、自己負担額90,000円
4月15日
限度額適用認定証が交付
この場合、既にA医療機関で支払った額と自己負担限度額の差額(90,000円-80,430円=9,570円)については、後日、被保険者が保険者に申請することにより、保険者から高額療養費として払い戻しされます。また、このケースで、4月16日以降、A医療機関で外来診療を受けた場合は、【ケース2-2】のように医療機関から払い戻しを受けることができる場合を除き、医療機関の窓口では、定率の自己負担額をお支払いいただくことになります。1日と16日以降にA医療機関で支払った額の合計額と自己負担限度額の差額については、後日、被保険者が保険者に申請することにより、保険者から高額療養費として払い戻しされます。
※ 個々のケースにより医療機関等での払い戻しが可能な場合があります。
【ケース2-2】(限度額適用認定証提示前に自己負担限度額に達したが、医療機関から払い戻しを受けることができる場合)
(70歳未満・一般所得にあてはまる方)
4月1日
A医療機関で外来診療 総医療費300,000円、自己負担額90,000円
4月15日
限度額適用認定証が交付
4月16日
A医療機関で外来診療 総医療費100,000円、自己負担額0円、払い戻し8,570円
医療機関から払い戻しを受けることができる場合、4月16日の外来診療では自己負担を支払う必要はありません。既に支払った分と自己負担額との差額、90,000円-81,430円=8,570円が医療機関から払い戻しされることになります。
なお、月途中に限度額適用認定証又は限度額適用・標準負担額減額認定証が交付されても、医療機関等への提示が翌月となった場合は現物給付化を行わずに、保険者に後日、高額療養費の申請を行うことにより当月分の高額療養費の支給を受けることとします。
【下記の資料よりピックアップ:質問9】
Q:同一の月に複数の医療機関等を受診した場合どうなるか。医科・歯科別はどうなるか。
A:複数の医療機関等を受診した場合は、それぞれの医療機関等ごとに外来の高額療養費の算定をすることになります。また、同一医療機関に併設された医科・歯科についても別々に高額療養費を算定することになります。
【ケース1】
(70歳未満・一般所得にあてはまる方)
A病院(外来・医科):総医療費100,000円、自己負担額30,000円
B薬局:総医療費200,000円、自己負担額60,000円
C病院(外来・医科):総医療費100,000円、自己負担額30,000円
複数の医療機関等同士の医療費を医療機関の窓口で合算することはできないため、高額療養費の現物給付化の対象とはなりません。
※ この場合、高額療養費の現物給付化の対象とはなりませんが、被保険者は後日、保険者に高額療養費の申請を行うことにより高額療養費の支給を受けることになります。
【ケース2】
(70歳未満・一般所得にあてはまる方)
A病院(外来・医科):総医療費100,000円、自己負担額30,000円
B薬局:総医療費200,000円、自己負担額60,000円
A病院(2回目・外来・医科):総医療費300,000円、自己負担額90,000円
この場合、複数の医療機関同士の医療費を医療機関の窓口で合算することはできないため、B薬局では60,000円を支払う必要はあります。ただし、同一の医療機関では合算することが可能なため、自己負担限度額に達し、A病院の医療費は合算され、A病院の外来にかかる自己負担限度額は、80,100円+(100,000円+300,000円-267,000円)×0.01=81,430円となります。A病院の2回目の支払いは、81,430円-30,000円(1回目支払い分)=51,430円でよいことになります。
※ この場合、被保険者は、別途、保険者に高額療養費の申請を行うことにより、B薬局での一部負担金を含めた高額療養費の支給を受けることになります。
【下記の資料よりピックアップ:質問11】
Q:同一月に同一の医療機関で外来と入院を受診した場合どうなるのか。
A:外来と入院は別々の扱いとなります。
【ケース】
(70歳未満・一般所得にあてはまる方)
A病院(入院):総医療費400,000円、自己負担額120,000円
A病院(外来):総医療費300,000円、自己負担額90,000円
この場合、外来と入院は別々に扱うことになるため、入院では自己負担限度額の80,100円+(400,000円-267,000円)×0.01=81,430円を支払い、外来でも自己負担限度額の80,100円+(300,000円-267,000円)×0.01=80,430円を支払うことになります。
※ この場合、合算の対象となるため、被保険者は後日、高額療養費の申請を保険者に行うことにより差額分の高額療養費の支給を受けることになります。
【下記の資料よりピックアップ:質問12】
Q:同一月に同一の医療機関に同一の世帯で複数人、受診した場合であって、合算してはじめて高額療養費の対象となるときはどうするのか。
A:入院の時と同様、高額療養費の現物給付化については、個人単位で計算しますので、各患者が各々自己負担限度額に達しない場合には、高額療養費の現物給付化の対象とはなりません。ただし、同一の世帯で合算し、高額療養費の対象となる場合には、後日、保険者に高額療養費の申請を行うことにより高額療養費の支給を受けることになります。
【下記の資料よりピックアップ:質問15】
Q:平成24年4月の施行段階で多数回該当に該当している場合は引き続き外来でも多数回該当となるのか。
A:平成24年4月の施行段階で多数回該当に該当しており、医療機関等で多数回該当にあたることが確認できている場合に限り、多数回該当の限度額により高額療養費の現物給付化が行われます。医療機関等で多数回該当にあてはまることについて確認できない場合には、被保険者は後日、保険者に高額療養費の申請を行うことにより多数回該当の限度額との差額分が、高額療養費として支給されます。
(労務管理資料お問い合わせ番号13:厚生労働省)
≪被用者保険にご加入の方≫【第2版:平成24年2月16日】
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/gairai_sinryou/dl/120110-03.pdf
そもそも高額療養費とは?が知りたいお客様は下記の資料をご覧ください。
(労務管理資料お問い合わせ番号14:厚生労働省)
高額療養費制度を利用される皆さまへ
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/gairai_sinryou/dl/120110-02.pdf
お問い合わせ:名古屋市中区大井町2-11 中部労務管理センター 電話番号:052-331-0844